PROJECTわたしたちのプロジェクト
イノダコーヒ 三条店
京都、三条通に面する老舗喫茶店、イノダコーヒ三条店の建て替えプロジェクトです。
三条通は平安時代には京都の東西の主要路をなした三条大路であり、豊臣秀吉により東海道の起点(終点)となる三条大橋を架橋されたころからは近世のメインストリートとして、また、明治に政府が京都から東京に移された後の近代期には、日本銀行京都支店をはじめとする金融機関や報道関連会社が多く集まる商業地のメインストリートとして栄えました。現在でも江戸時代から続く老舗や近代建築が多く存在する三条通は歴史性に富む通りです。
三条通に1970年に開店した旧店舗は、外壁のタイルと三条通に面した大きな開口部、内部の大きなオーバルカウンターが特徴的であり、多くの人々に親しまれてきましたが、建物の老朽化に伴い建て替えとなりました。新店舗は、旧店舗の特徴を継承しつつ機能面や安全面をアップデートし、これまでの歴史ある三条通の風景の一部と多くの人に愛された空間とをこれからにつなぐこと、そして新たに多くの人々に親しまれることが役割であることをクライアントと共有しプロジェクトを進めました。
旧店舗の面影を残すタイル貼りの外壁部分は、客席のある2階までが三条通にオープンな表情となる開口部を設けています。また、屋根と袖壁で外壁部分を覆うことで、通りに面した半屋外空間を創出し、三条通を彩り、半屋外のアプローチ、ベンチスペースは三条通と店内とをシークエンシャルにつなぐ構成としました。
外壁面のタイルは旧店舗のタイルを再現したものを使用し、ファサードサインのコーヒーポットとコーヒー豆缶の立体サイン、両袖壁の手書きの縦型看板を旧店舗から引き継ぎ、かつての面影を残しつつ、これまでのイノダコーヒ三条店をこれからにつなげる架け橋となる意味を込めアーチ形状を取り入れました。
また、現在の三条通は幅員約6.2M、多くの歩行者が行き交い、車が徐行するヒューマンスケールな活気あふれる通りであることから、三条通を行き交う人の流れの速さに呼応し段階的にファサードの素材があらわれてくるよう素材ごとに奥行に違いをつけています。
安定した光を得られる三条通側の客席はテーブル席を配置し、吹抜のあるエントランスを挟んだ奥側に旧店舗から引き継がれたオーバルカウンターを配置しました。オーバルカウンターはオリジナルに一部を新たに延長しています。また、コーヒーを淹れる所作を眺めることのできるオーバルカウンターの固定椅子もオリジナルを補修、張り直しし、旧店舗のシンボルのひとつとして引き継いでいます。
2階は客席、貸し室を設け、どのような場所にいても吹抜け越しに全体の様子が感じ取れる構成としました。
昔から通うユーザーにとっても新たにイノダコーヒを知るユーザーにとっても愛される店舗になることを期待しています。
photo by Daijirou Okada
- 規 模
- S造 地上2階建
- 設計期間
- 2023.1 - 2023.9
- 施工期間
- 2023.10 - 2024.10
- 敷地面積
- 345 m²
- 延床面積
- 497 m²
- U R L
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