PROJECTわたしたちのプロジェクト

枚方駅前吉泉ビル

京阪枚方市駅前ロータリーに面する昭和48年に完成した旧耐震のビルは「ジャンボビル」という名称で夜の商業ビルとして有名でしたが、時代の変化とともにその存在価値が変化していきました。そのビルを数年前に購入したオーナーは、枚方駅前の再開発に伴って時代に合ったビルに建て替える計画をしていました。
この建物は建設当時の都市計画により容積率は600%で建築されています。しかし、現在の都市計画では容積率は400%に変更となっています。そのため、建て替えをすると規模が2/3に減少することになり、賃貸面積の減少とさらに建築費や解体費も含めて事業収支を検討するなかで、既存建物をそのまま使えるリノベーションという方向に計画を見直すことになりました。
計画変更に伴い、リノベーション設計経験の豊富さからアーキネット京都が選出され、今回のプロジェクトへとつながりました。
平面形状が三角で正面が全面サッシという耐震としてはバランスの良くない建築ですが、サッシ面にブレースを設置することは商業建築として、また、駅前再開発エリアに面する建築としてもふさわしくないと考え、外観のデザイン性、内部空間の自由度を制限しないアウトフレームによる耐震計画を採用しました。水平フレームにブレースを組込んだ壁状のフレームが地震力を負担するというものです。
一般的なアウトフレームは外側に柱と梁を配置しますが、考案したアウトフレームは、水平に持ち出したフレームに耐震要素となる鉛直ブレースを内蔵したものを設けています。この考え方により耐震壁の配置が自由になり、これらを市松状に配置することで、一般的なアウトフレーム構造とは異なる特徴のあるデザインが可能となりました。
デザインの目的は2つあり、1つはオーナーの既存のイメージを払拭したいという要望、もう1つは駅前の再開発に彩りを加えるような建物を創るというものです。完成した建物は、レンガタイルの市松の壁がチャームポイントとなり、歩道を歩く人々にモダンなデザインの中にも優しい印象を与えるような、一見するとリノベーションとは思えない建物となりました。
リノベーションの技術により、デザイン性と耐震性を両立させ、さらに、事業収支の改善と街並みに寄与することが可能となったプロジェクトの一例となりました。


photo by Daijirou Okada


 

BEFORE

AFTER

規  模
S造地下1階 地上9階建
設計期間
2023.06 - 2024.01
施工期間
2024.02 - 2025.03
敷地面積
4,087 m²
延床面積
694 m²
U R L
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