INSPIRATION
建設当時、この建物は容積率600%で建てられていました。しかし現在の都市計画では容積率が400%に引き下げられており、建て替える場合は規模が3分の2に縮小してしまいます。賃貸面積が減るうえに、解体費や建築費の高騰も重なるため、事業収支の悪化は避けられません。そのため、耐震性とデザインの課題を解決できるのであれば、既存建物を活かせるリノベーションが、より現実的で有利な選択肢となりました。当時の図面を確認すると、この建物は三角形の敷地に対して最大限のボリュームで建てられており、正面は連続窓、裏面はRC壁という、耐震上バランスの悪い形状であることが分かりました。そのため、偏心に対応しながら、商業ビルとして魅力的なファサードをどのように形成するかが、このプロジェクトの主要なテーマとなりました。

出典:枚方市駅周辺地区第一種市街地再開発事業 添付資料をもとに追記
TECHNIQUE
デザインの視点と耐震設計
デザインの目的は大きく2つありました。1つ目は、オーナーが望む「既存のイメージを払拭すること」。2つ目は、「駅前の再開発に彩りを添える建物をつくること」です。そのため、単なるテナントビルとしての機能だけでなく、駅前エリアの景観に寄与するデザイン性も重視しました。ビルの正面となる北東側は大通りに面しており、上層部は持ち出しスラブに腰壁・垂壁があり、その上からサッシとパネルが覆い、低層部はパネル外壁が敷地境界いっぱいにせり出していました。そこで上層部では、腰壁と垂壁をカットして軽量化し、全面サッシを採用しました。 低層部では、フレームラインからはみ出していた部分を減築し、その部分に耐震ブレースによる補強を行うことで、建物のプロポーションを整えました。

改修前

改修後
耐震ブレースは一般的なラーメン構造によるアウトフレームではなく、水平に張り出したフレームの中に耐震要素となる鉛直ブレースを組み込んだ構成としました。外観上は壁のように見えるこの耐震ブレースを市松状に配置することで、耐震性とデザイン性を両立させた特徴的なファサードを実現しています。 また、この耐震ブレースは耐震診断の結果に応じて、必要な強度を確保できるように部材寸法や幅を調整できる設計としています。

当初案

地震力を負担する耐震ブレース

施工中の耐震ブレース
EFFECT
この建物は、東側が枚方市駅前再開発の北口駅前ロータリー、西側が旧京街道に面し、さらに敷地の四方すべてが道路に囲まれた、特異な立地条件にあります。私たちはこの環境を強みと捉え、地域の新たなランドマークとなるデザインを目指しました。完成した建物は、耐震ブレースを内蔵したレンガタイルの市松状の壁が印象的なチャームポイントの建物となりました。歩道を行き交う人々に、モダンなデザインでありながらどこか温かみのある表情を見せ、リノベーションとは思えないほど新しい魅力を備えたビルへと生まれ変わりました。



改修前

改修後
