PROJECTわたしたちのプロジェクト

足立病院 新館

京都で120年にわたり、産婦人科病院として地域医療に取り組んできた足立病院の建替移転プロジェクトであり、今回は一期目の新館の新築工事です。
既存棟の老朽化に伴い、新館には、病院として必要な容積の確保、機能維持・向上、地震・水害などの自然災害等への対応、周辺環境への配慮が求められました。まず、必要容積を確保するためには、旧館東側の計画地に設けられた高度地区の高さ限度である15mを突破する必要がありました。そこで、京都市との景観審議会を経て高度地区計画の許可による特例を受け、地上6階建ての病院を新築することが可能となりました。京都の市街地での高度許可として、初めての事例です。
また、地震力を通常の1.25倍に割増した構造耐力の確保や、地下階に居室を設けない計画により、大地震や水害等の災害にも耐えうる設計としています。
外壁面は低層、中層、高層の三層構成としてデザインを切り替え、道路に面する外壁面を層ごとにそれぞれ3m程度ずつ後退させることにより、街並みへの圧迫感の軽減を図っています。
低層の町家と、中高層の建物が混在する周辺の街並みとの調和を生むため、低層部は落ち着いた質感やアースカラーの外壁材を採用し、中層部には長大な外壁の圧迫感を抑えるためにランダムなピッチで縦格子ルーバーを配置しました。このルーバーは、国内で実際に発生した火災の事例をもとに、非常時の一時退避スペースとしての役割も担っています。
エントランスは細い路地のようなアプローチを通る動線計画とし、それに添うように設けた外観、内観に繋がる連続アーチにより、来館者を招き入れるような空間を演出しています。この動線計画により、明るい道路側に待合を設けることも可能となりました。
内装は病院らしさを感じさせない、ラグジュアリーさを随所に取り込んだホテルライクな空間を目指しました。フォーカルポイントとなる石の壁面、折り上げ天井やデザイン性の高い間接照明など、シーンごとに空間を彩る要素を取り入れながら立体的構成を意識し、それぞれの空間が単調にならない工夫を散りばめています。
入院室はプライバシーに配慮した動線計画とした上で、足腰への負担が少ないカーペットの採用や、ゆったりと使用できるドレッサーの設置、温白色の照明や間接照明を用いる等、くつろぎの空間を追求しました。
退院食を提供するカフェは、眺めと日当たりの良い最上階に配置しています。
多角的な視点とアイデア・専門的技術により足立病院が目指す医療提供に必要な病院計画を進め、安心安全な医療建築環境を整備し、妊娠、出産という女性にとって、また家族にとって命がけの一大イベントに寄り添い、彩りを添える空間づくりを実現しました。


photo by Daijirou Okada


 

規  模
S造 地上6階建
設計期間
2020.4 - 2021.9
施工期間
2021.10 - 2022.8
敷地面積
894 m²
延床面積
3,518 m²
U R L
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