SOLUTIONわたしたちの解決方法

人々が集う、街の中のテラス減築によって多層的街路を創出する

LANI ISOGAMI GARDEN TERRACE


BACKGROUND

神戸三宮駅から徒歩約10分、神戸磯上エリアの旧事務所テナントビルの事例です。ビルオーナーは建設以来所有していた事務所テナントビルの老朽化に伴い、建て替えを検討されていました。

INSPIRATION

計画当初は、敷地内の既存建物と立体駐車場を解体撤去し、店舗と共同住宅からなる複合施設を新築する計画案でした。当初の新築案では、建物外周部に加え建物中央部にも豊かな外部空間を設け、共有部のほぼ全てを半屋外的環境とし、利用者、居住者が屋外環境を身近に感じることのできる計画でした。しかし、基本設計を終えた頃にコロナ禍を迎え、外出自粛等で全国的にテナント店舗が相次いで撤退する事態を受け、また、建築工事費の高騰を受け、計画を見直さざるを得ない状況となりました。そこで、既存建物を利用しつつ、新築案で目指した豊かな外部空間をもった計画を実現できないかを検討するため、既存建物の調査を行いました。既存建物は、外壁タイルの剥落の恐れがあり、押し出し成型板も経年劣化が見受けられ、そのまま継続して使用するには危険な状態でしたが、構造躯体については健全な状態であったことから建物全体の積載荷重が増大しない範囲で既存建物を改修していく方針としました。改修では劣化の著しい外壁を撤去し、新たにセットバックした位置に外壁を設けました。また、既存建物を利用しつつ別棟を付け足していくように増築していくことで、敷地全体が豊かな外部空間を持った一体のエリアとなるよう計画することとしました。

改修前

改修後




TECHNIQUE

最小限の解体とスローな再開発

私たちの提案は、自走式駐車場を解体した跡地に増築棟を新築し、既存棟の2階レベルとブリッジで繋ぐことで一体的な敷地利用を図ることでした。ブリッジはエキスパンションジョイントにより建築基準法上の別棟とすることで既存棟との接続を成立させており、一の建築物とすることで、当初計画していた共同住宅を将来的に増築することも想定しています。

将来的に増築する想定




既存棟の減築ダイヤグラム

既存棟はタイル剥落とアスベストの問題を抱えていた既存外壁を撤去し、外壁をセットバックして新設することで屋内だった空間を外気に開放した屋外廊下としており、外部空間とすることで建物全体の積載荷重を減らしています。


減築により可能となった避難経路のアイデア

建物の規模から2以上の直通階段が必要であり、元々屋内階段と屋外階段がありました。敷地利用の観点から経年劣化している屋外階段を撤去し、既存の屋内階段を有効に外気に開放した屋外避難階段に改修しました。外壁セットバックにより東面は各テナントの設備バルコニー兼避難上有効なバルコニーとしています。





減築により多層的街路となった屋外廊下が建物のファサードをつくる

西面に設けた各テナントの出入口をガラス張とすることで、周辺道路から店舗の様子が目視できるため、すべてのテナントが路面店となるような構成としています。増築棟は飲食テナントが入る想定としており、前面道路と既存棟から5m程度セットバックした位置に2層のボリュームを配置し、道路側の2階レベルにテナントが専用利用できるテラスを設け、周辺道路から既存棟への視線を遮らないよう既存棟に寄り添わせる計画としました。



EFFECT

建築費が右肩上がりに高騰する現在、コストの優位性を活かしつつ、既存ストックを活用したリノベーションにより、計画当初からの豊かな外部空間を纏った多層的な街路というコンセプトを実現しました。 建物外周部を外部空間でぐるりと囲うことで、都市と建物内部のアクティビティが中間的領域を介してつながる関係性をもった建物として生まれ変わりました。”LANI”はハワイで楽園を意味します。開放的で爽快な外部空間を纏った個性的な建築が磯上エリアの活性化にも寄与していくのではないかと期待しています。